2010-06-27 19:40:06 テーマ:選挙

公職選挙法の規定をどう解釈するかだが、皆さんに一番身近な存在はやはり選挙管理委員会だろう。


選挙管理委員会は都道府県と各市町村にある。

選挙管理委員会には選挙管理委員がいるが、個々の選挙管理委員が法令の解釈をしている訳ではない。

具体的な公職選挙法の解釈なり解説は、選挙管理委員会の事務局が行っている。


地方公務員である選挙管理委員会の事務局に公職選挙法の法令解釈が正確に出来るだろうか、と心配される向きもおられようが、市町村の選挙管理委員会の事務局は都道府県の選挙管理委員会から示されている通達に基いて具体的な法令の解釈や解説をしているだけ。


それでは、都道府県の選挙管理委員会はどんな基準で通達を作っているのか。

都道府県の選挙管理委員会が公職選挙法の立案作業をやっているわけではない。

実は、都道府県の選挙管理委員会の解釈や解説は、総務省の自治行政局の選挙部長が発出した通達が基準になっている。


それでは、総務省の自治行政局の選挙部が公職選挙法の立案を行っているのか。

答えは、ノーである。


公職選挙法は議員立法なので、総務省が直接立案の責任を負うことはない。

内閣が提案する閣法ではないので、当然、内閣法制局の審査も経ていない。

したがって、内閣法制局に公職選挙法の法令解釈についての有権解釈の権限がある訳ではない。


公職選挙法の改正は、基本的に衆議院議員によって担われるので、衆議院の法制局が立案作業の事実上の事務局になり、国会議員のする立案作業を補佐することになる。

この作業に、事実上総務省の自治行政局選挙部の担当者が専門家として関与することになる。

この立案作業の過程で出てきた様々な議論を踏まえて、総務省の自治行政局選挙部の担当者が想定問答集を作る。

検討の過程で出された様々な疑問をどうクリアーしたか、その議論の内容を整理したものが想定問答である。


選挙部長の通達は、基本的に国会審議用に作成されたこの想定問答に基いていると言って良い。

勿論、国会の審議の過程で行われた実際の質疑内容、とくに提案者の答弁内容が重視されることになる。

選挙管理委員会の法令解釈や解説は、結局この範囲を超えることは無い。


私の見るところ、議員立法はずいぶん杜撰で乱暴なところがある。

政治的な駆け引きや思惑で、エイヤッと、その時々の勢いで規定を作るところがある。

執行部の上層部だけで法案を纏めると、この規定の趣旨はどこにあるのか、一体どこからが違法で、どこまでが適法なのかがよく分からない規定が混じっていることがある。

与野党の幹部だけで折り合いをつけた改正の場合は、部会や委員会での実質審議が省略されてしまい、殆ど審議なしで成立してしまうので、結構恐ろしい。


立法者の意思、ということで法案提案者の趣旨説明が極めて重視されるが、立法当時立案者が想定したごくごく典型的な事例には当て嵌まっても、それ以外の限界事例やグレーゾーンのことになるとさっぱり要領を得ないことになる。


選挙管理委員会の典型的な回答は、公職選挙法に抵触する虞があります、というものだ。

選挙管理委員会に質問が寄せられるのは、大体が典型的ではないもの。

公職選挙法の規定を文言どおり読んだら、どうも該当しそうだが、本当はどうなのか、というのが、大体は選挙管理委員会に寄せられる質問だろう。

選挙管理委員会の職員としては、違反になりません、と断定的に言うことはなかなか難しい。

抵触する虞があります、と答えれば、まず間違いにはならないから、選挙管理委員会に聞けば大抵は違反の虞があります、ということになるはずだ。


結局は、判例や実例の積み重ねで対処する外無いことになる。

警察は、選挙違反の取締りの観点から公職選挙法の解釈をする。

選挙管理委員会の解釈や解説を参考にはするが、必ずしもこれに拘束されない。

違法の捜査、違法な逮捕、違法な家宅捜索、違法な取調べとされないかどうかが、基本的には警察の判断基準になるだろう。

たとえ形式的な選挙違反であっても、公職選挙法の規定に一見抵触していると見れば捜査の対象としても違法捜査には当たらないことになる。

現実に捜査の対象にするかどうかは、その時々の選挙違反取締対策本部の方針によって決まることになるが、私の見るところかなり流動的なところがある。


警察にパイプがある人がいれば、今度の選挙ではどんなことが捜査の対象となるか、ある程度の傾向と対策を練ることが出来るが、いずれにしても選挙の世界は、普通の人にはおよそ想像もつかない世界である。


さて、以上のことを理解して頂いたうえで、それでは公職選挙法の有権解釈の権限はどこにあるのか、という問いに対する一応の答えを出しておこう。

裁判所にある、というのが、私の答えである。

その中身は結構複雑だが、今日のところは、この程度で止めておくことにする。

皆さんのご意見をお伺いしてから、続きを書くことにしたい。