昨年出版した「選挙の神様」の続編として、「選挙を変える、日本を変える」を出すことにした。
改めてこの本のためのまえがきを考えたが、「選挙の神様」のまえがき以上のものは出てこない。

私は、私のすべてをこの一文に籠めてしまった。
あえてこの新しい本でも、同じまえがきを使わさせていただくことにした。
この本に収載した記事の一部は「選挙の神様」にも収載されている。
しかし、配列が違う。
文章の流れが違う。
まるで別の文章のような印象である。
多分、読者の皆さんの印象もそうだろう。

このまえがきも、皆さんには別のものに見えるのではないだろうか。

「世界一まずいうな重の話

目の前にいる人は、いかにもおいしそうに食べている。
いつもの、特別の時にしか食べないうな重だ。
熱々のご飯に、焼きたてのうなぎをのせて、たっぷりタレもかかっている。
でも、ちっともおいしくない。
口の中がパサパサして、味がしない。
おいしくない、というより、まずい。
腹の辺りがジリジリとしてきて、食事が満足に喉を通らなくなる。
自分の目の前にいる家族に余計な心配をかけてはならない。
そう思って平然を装うが、その後どうなっているのか気になって仕方が無い。

朝早く、警察から連絡があったそうだ。
なにか警察で聞きたいことがあるらしい。
それも、一人だけではない。
私の参議院選挙で自転車に乗って応援してくれた人だったり、事務所に来て何か手伝いをさせて下さい、と申し込んでくれた奇特なボランティアの人など、私の選挙を手伝ってくれた若い人たちが一斉に警察の事情聴取を受けることになった。

何事か、と不安になるが、まるで分からない。
ジリジリと不安が募る。
もう用件は済んでいるはずだ。
そう思うが、何の連絡も無い。

私が、世界一まずいうな重を食べたのは、その時がはじめてだ。
そして、これが最初で最後だった。
これは、本当にあった話である。
本当にまずいわけではない。

しかし、あのときほど、まずいうな重を食べたことは無い。
世界一まずいうな重の話である。
この話には、続きがある。」

    2010年7月23日の「早川忠孝の一念発起・日々あらたなり」所収の「世界一まずいうな重の話」

この書をどうしても世に出しておきたかった。
私が衆議院議員選挙の自民党の公認候補者に選ばれたのは平成7年だが、過去17年間に私が直接体験もしくは見聞してきたことをかなり率直に書いてある。
全部書くとまだ差し障りがあるので書かなかったり、いわば寸止めの表現にした部分もあるが、これから選挙に挑戦される若い方々が心得ておくべき選挙の実相については相当踏み込んで書いたつもりだ。

勿論選挙には様々な顔があるから、この一冊では選挙の本当の姿は分からない。地域によっても違うし、国政選挙か地方選挙か、首長の選挙か地方議会議員の選挙かによっても違う。衆議院の選挙と参議院の選挙も違う。
しかし、違うということを十分認識しながら注意してこの書を読んでいただければ、若い方々にとって役に立つことが満載されていると思う。

折角高い志をもって国政選挙に挑戦した前途有為な青年が、大事なことを知らないために自分の一生をフイにしてしまうという姿は見たくない。
本人ならある意味で仕方がないと諦めが付くところだが、大事な家族や友人、知人、純粋な好意で応援してくれた一般の人々までも巻き添えにしてしまうようなことがあってはならない。
私はそう思っている。

しかし一般の常識が通用しないのが選挙である。
選挙の常識は一般の非常識、一般の常識は選挙の非常識、といったところがあるから、選挙を経験したことがない人がうっかり選挙に関わると大怪我をすることがある。
そのことを肝に銘じていただきたい。

世の中には選挙の神様と言われる人たちがいる。
選挙の神様は別に候補者に勝利をもたらすような選挙の女神のことではない。
選挙に携わる人々が怪我をしないように護る術を心得ている選挙のプロ、選挙運動を上手に仕切ることが出来る選挙のプロ、選挙の陣営を上手に束ねることが出来る選挙のプロがここで言う選挙の神様である。
選挙の素人たちは選挙の神様の応援を得ていないから、実に危うい選挙をやりがちである。

高い志をもって選挙に挑戦する若い方々の人生を台無しにするようなことは何としても避けさせてあげたい。
若い方々がみすみす落とし穴に陥るようなことは事前に回避させてあげたい。
そういう願いから、この書を上梓することにした。

私は、大学を卒業して当時の自治省に入り、富山県庁に出向して県選挙管理委員会の書記を務め、衆議院議員選挙、県知事選挙、県議会議員選挙の同日選挙と最高裁判所裁判官の国民審査の事務を担当した。県内市町村選挙管理委員会の指導も私の仕事だった。
司法、立法、行政の国権三権の第一線で仕事をしてきた国会議員はそうそうはいないはずだ。

私は二世、三世の世襲議員、世襲候補者ではなかったから、初めて選挙に挑戦する方々にとって一番大事なことを知っているはずだ。
私は6回の国政選挙を経験している。
当選したのはそのうち僅か2回だから、落選経験の方が多く、かつ落選中の期間の方が長い。

落選という経験ほど政治家を鍛えるものはない。
私は、およそ選挙違反でも何でもないのに、無所属での立候補ということで不当に選挙違反の嫌疑をかけられ警察の捜査のターゲットにされたという経験もしている。

こういった経験は、そう簡単に得られるものではない。
こういった経験は、そう誰にでも堪えられるものでもない。

一切封印して水に流すという方法もあったが、私は私の後に続く人のために、あえて比較的差し支えのない範囲で書き記すことを選んだ。
私が伝えるべき相手は、選挙に関わることがあるすべての人である。
党派は問わない。
日本の明日を担うために各級選挙に挑戦する決意を固められたすべての若い方々や、その若い方々を応援しようとするすべての方々にこの書を読んでいただきたいと思っている。

この書を最後まで読み通していただければ、これからの政治家はどうあるべきかということに対する答が少しは見えてくるかも知れない。

この書を書き残すために、私は懸命にこれまでの政治活動を続けてきたようなものである。
本書は、私に弁護士道というものの在り方を教えてくださった恩師の故矢吹輝夫弁護士、私が現在所属している太陽コスモ法律事務所の主宰者で、政治活動で私や私の家族が窮地に陥った時に助けていただいた盟友の岡田康男弁護士、さらには私の長年にわたる弁護士生活とこれまでの政治活動を支えてくれた私の大切な家族に捧げさせていただく。」