2013-04-30 11:30:27 テーマ:選挙
ようやく弁護士ドットコムに私の回答が掲載されたので、私のブログでも書いておく。
弁護士ドットコムの方は編集者の判断で多少修正されているが、私が回答した原文は下記のとおりである。

インターネット選挙運動の注意事項

1 ネット選挙運動が解禁されたことで、一般有権者が政党や候補者の情報をインターネットを通じて収集したり、電子メールを除いて一般の有権者が政治や選挙に関してインターネットを通じて自分の意見を政党や候補者あるいは知人友人に対して発信できるようになりました。

2 ただし、今回の解禁は、これまで禁止されていた文書図画の頒布の制限の一部解除ですから、公職選挙法の枠組み自体は変わっておりません。

3 一般の有権者が電子メールを通じて選挙運動をすることは今回の改正でも禁止されておりますので、一般の有権者が電子メールで特定の候補者への投票依頼などの選挙運動をすることは出来ません。
もっとも、選挙運動に当たらない行為はそもそも禁止の対象とはなっておりませんので、選挙運動に当たらないように注意しながら電子メールを利用して自分の意見を発信することは差し支えありません。

4 公職選挙法は選挙の自由や公正を護るために様々な規制を導入しており、具体的な法の解釈や適用については判例や先例をよく調べないと分からないことが多く、しかも構成要件が曖昧で法律の専門家でも判断に迷うことが多く、選挙は一般の方の常識が通用しない世界だと思っておく必要があります。
  公職選挙法は、選挙違反の構成要件が広すぎるきらいがあり、取り締まる側の判断次第でそれまでは見過ごされていたことがある日突然選挙違反の対象になる、ということもありますから、くれぐれも迂闊に素人判断で判断しないことです。

5 今回の改正でも事前運動の禁止や未成年者の選挙運動の禁止、運動員買収の禁止、戸別訪問の禁止、法定外文書の頒布禁止、法定選挙費用の制限逸脱禁止などの規制は続いており、これらに違反すると選挙の自由や公正を害するものとして厳しく処罰される虞があります。

6 ネットでは匿名だからということで何でも書きこむ癖がついていると思いますが、選挙に関する書き込みは必ず書き手が分かるようになっている、というこということを知っておくべきです。
 言い換えれば、選挙違反の取締りをする立場からすると、インターネットを利用しての選挙違反は証拠が残っていることから摘発が比較的に容易だ、ということになります。

7 選挙は候補者の間での激しい戦いですので、選挙の自由や公正を害するような行為は厳しく処罰されます。
 ごく軽い気持ちやいたずらでやった行為も選挙の自由や公正を害する行為だと看做されると厳しい捜査の対象となります。
 ネットにおけるなりすましや候補者についての虚偽事項の公表等は選挙の自由や公正を害する行為そのものです。

8 ネット選挙が過熱すると、ツイッター、フェイスブック等を通じての組織的、集団的選挙妨害が行われる可能性がありますが、うっかりそういった渦の中に入るととんでもないことになります。

9 国民投票法の制定で、公職選挙法を改正して18才以上の方には選挙権を付与することになっておりましたが、未だにこの部分の改正は実現しておりません。
 未成年者の方は自分の意見を発表したいでしょうが、選挙運動になるような内容の書き込みをすることはできません。

10 ツイッターやフェイスブックでどんなことを言っても基本的に自由ですが、誰かから頼まれて候補者や政党に対する誹謗中傷文言を書き込むようなことは危険です。
 いずれにしても、これからは匿名だから大丈夫だろう、などと思って無責任な書き込みをしないことが肝腎です。

11 ネット選挙運動の解禁は、日本の選挙を大きく変える可能性があります。
   今回の改正は政党や候補者の都合を優先したところもありますので、これからは一般の有権者の目で日本の選挙をどう変えていくか、一般の有権者の立場でそれぞれの皆さんの意見を発信していく必要があります。